大学時代の塾講師をしいていたころの話(大学3年生)
大学3年生になり、僕は新潟県三条市という所にあった,大手の学習塾で中学生の2つのクラスの担当をすることになりました。教える科目は英語・数学でした。
新潟大学から三条市までは電車を2回乗り継いで、片道1時間くらいかかりました。
遠かったです。塾が終わって下宿に着くのは夜の23時を越えていました。
三条での塾の非常勤講師のとき、僕には2つの大きな出来事がありました。
今振り返ると「若かったな」と笑い飛ばせるのですが、当時の21歳の僕には深刻な出来事でした。
僕は、今もそうなのですが、授業中に生徒さんに大声を上げて叱り飛ばす、ということはほとんどありません。
大門での「寺子屋学習館」7年4カ月間の中では一度も生徒さんをどなりつけた、ということはありません。
かなり穏やかで、落ち着いた授業をしています。生徒さんとの雑談を楽しみながら授業をしています。
さて、話は大学3年生に戻って・・・
三条市での塾の講師をしていたときでした。
僕が担当していたクラスに、「かなり授業態度の悪い女子生徒さん」が1名いました。
塾の中では「問題児」としてあつかわれ、どの先生もその生徒さんを警戒していました。
僕が初めてその女子生徒さんと対面して授業をしたとき、彼女は笑顔で
「先生って一太郎って名前なんだ?」と質問してきました。
「いいえ、先生の名前は優一郎だよ」と交わしたのが彼女との初めての会話でした。
僕は特別悪い印象をもったわけでもなく、素直な子なんだな、と思っていました。
ところが、次第に僕の授業になれてきたころ、彼女の問題行動がちらほらと出始めました。
まずは、「授業中にうるさい」ということです。他の生徒さんが真剣に問題を解いているのに、彼女だけは他の生徒さんに話しかけたり、授業とは全く関係のない話を僕に
何回もしてきました。
最初のうちは僕も真面目にこたえていたのですが、しだいに彼女の態度はエスカレートしていき、「授業妨害レベル」にまで発展していきました。
僕はすっかり困ってしまい、同じ塾で講師をしていた先輩に相談しました。先輩は
「そうらね~。難しいところだね。でも佐伯君が授業をしているんだっけ、佐伯君の好きなようにやればいいよ」
とおっしゃりました。
僕は下宿に帰って、下宿仲間にも相談していました。彼らは「まぁ子どもは甘やかすとつけあがるからね。でも女子生徒?ちょっと難しいね」
と言っていました。僕も男子生徒だったら、しかったりするのですが、女子生徒だったため、どう対応していいのかわからず、「怒ったとしたら下手したら塾をやめてしまうだろうな」
と思っていました。
この女子生徒さんにはかなり苦しめられました。まず言葉づかいがものすごく悪い。
たとえば授業中に僕が黒板にチョークで文字を書きながら説明していると、彼女は
「黒板書くか説明するか、どっちかにしれいや!!」と大声で僕に言ってきました。
僕は一瞬ムカっときたのですが、確かに彼女の言う通りだなと思ったので、黒板を書くのをやめ、説明しました。
そういったふうに、いちいち小言を言って彼女は僕にからんできました。
ろくにノートも書いていないのに文句だけは一人前。
そんなことが続いたある日、毎度のように彼女はノートもとらず、一人で騒いで周りの生徒さんに迷惑をかけていました。
ついに僕の堪忍袋の尾は切れました。
僕は彼女の机の所につかつかと歩いていき、彼女のノート、塾のワーク、そして机の横にかけてあった彼女のバッグを全部とりあげ
それらを廊下に投げ捨て「お前、もう帰れ!邪魔や。何回同じこと言わせるんよ?ここはお前だけの塾じゃないんやぜ。みんなの塾なんよ。迷惑なんやぜ。帰れ!!」
と鬼の形相で彼女を大声で罵倒しました。
彼女は半べそをかきながら廊下に出て教科書やワークを拾い、バッグを持って教室へ黙って入ってきました。
それ以上は僕は何も言わず、そのまま授業を続けました。彼女は静かになり最後まで授業を受けていました。
これが僕の30年以上にわたる塾・家庭教師経験の中で、唯一生徒さんにブチ切れた事件です。
帰り道、僕は電車の中で1日を振り返り、とても落ち込んでしまいました。
生徒をどなりつけてしまった。しかも女子生徒。
悪ガキの男子生徒ならいざしらず、女子生徒さんを罵倒してしまったことがすごくショックでした。
当時の僕は教育書を熱心に読んで勉強していました。その中に、ことあるごとに
「教師が生徒をどなりつけるのは、教師の指導力のなさが原因。生徒は悪くない。自分の教育力のなさを恥じるべき」と繰り返し書いてありました。
当時僕は、塾の授業があった日は下宿に帰って来てから毎回「日誌」をつけていました。こんなことを〇〇君に言ったら喜んでいた。
連立方程式の応用問題を説明しているとき、ほとんどの生徒が理解できず、「わかんね」と言っていた。などなど。
思いつくままにその日あった出来事を書き連ねていました。大学生にしては、かなり真面目で熱血だったと思います。まぁ大学卒業後は小学校の教員になると決めていたので
当たり前と言えば当たり前なのですが…
そのどなりつけてしまった彼女は、まあ相も変わらず授業態度は変わらなかったのですが、ただ彼女の良いところは「過去を引っ張らない」ところでした。
どなりつけてしまった次の塾のときも、ケロッとして僕に話しかけてきました。僕はとても救われた気持ちになりました。
彼女のことは今でもよく覚えていて、僕が万が一ブチけれそうになったときはいつもあの出来事のことを思い出しています。
ただ、確かに教師が生徒をどなりつけるのは悪いことかもしれませんが、「授業態度が悪くて、周りの生徒さんに迷惑をかけている場合」はやっぱり叱る必要はあると思います。
優しくさえしていればいい、というわけではありません。
話は少し飛びます。
僕は大学3年生の10月から中3クラスを担当していました。
中3生は1年生・2年生とは異なり、受験生なので授業中はもちろん皆真剣に授業を受けています。私語をしている生徒さんはいません。
静かな環境の中、日々の授業が進んでいきます。
その3年生クラスの最後の授業の日、僕は3年生にアンケートを書いてもらいました。
「この塾に来てよかったこと」そしてもう一つは「佐伯先生にはこんな先生でいてほしい」ということを書いてもらいました。
そのアンケートの答えの中に、仲良くしていた男子生徒が「いつも楽しい授業をしてほしい。でもしかるときはちゃんとしかる。そんなケジメのつけれる先生でいてほしい」
と書いてありました。
当時の3年生に書いてもらったアンケートに書いてあったことは、今でも覚えています。僕にとっては「貴重な財産」になっています。
以上、僕が唯一生徒さんにブチ切れてしまった、出来事について述べさせてもらいました。
自己嫌悪と後悔の念がありましたが、当の生徒さんがあっさりした生徒さんだったことが救いでした。
次回はもうちょっと「僕にとってはショッキングで深刻だった事件」について書かせていただきます。
PS:人に物を教えるということは「優しさ」と「忍耐」が必要だと思います。
大学時代に僕はいくつかのアルバイトをしていましたが、(メインは塾講師・家庭教師のアルバイトでした)
単発のアルバイトのときに、ことあるごとに僕らバイト生に感情の赴くままに怒鳴りつけ、「仕事を教える」というよりは「勝手に一人で切れている人」が数名いました。
僕はそのたびに「なんよコイツ。俺は絶対にコイツみたいな感情のおもむくままに人をどなりつけるような教え方はせんぞ」と思っていました。
当時僕が読んでいた教育書にこんな一文が書いてありました。
「言って聞かせて、やってみせて、やらせてみせて、ほめてやらねば人は動かじ」
大日本帝国の海軍軍人で、太平洋戦争開戦時の際の連合艦隊司令長官を務められた 山本五十六さんの名言です。
大学4年生のときに僕はこの言葉に出合い、今でも生徒さんと接するときに、一番大切にしている言葉です。
感情的にしかりつけても説得力は0。だれも聞いてはくれない。人に物を教えるときには「優しさ」「忍耐力」そして一番大切なのが「ほめて、認めること」
だと思います。何も教えることだけに大切な言葉ではありません。
人と接するときにもとても大切な言葉だと、僕はいつも思っています。
2026年08月08日 10:30
