僕が新潟大学の1年生のとき、同じクラスで仲良くなった女友達が僕にこんなことを言っていました。
「19歳の誕生日にシルバーリングをもらえると、その女の子は幸せになれるんだよ」と。
僕は「そうなんけ?知らんかったよ」と言いました。
その友達は5月30日生まれの人でした。新潟県新発田市(しばた市)の人でした。
僕は1年生のとき1年c組だったのですが、男子11人、女子33人というクラス編成でした。
僕は代議員(クラス代表)をしていて、よく大学のすぐ裏にある五十嵐浜でcクラスのメンバーでソフトボールをしたり、食事会をしたりしていました。
その新発田市の友達はソフトボールのときに、いつもピッチャーをしていました。同じサークルに入っていて、かなり仲の良い友達でした。
とても気さくな人で、僕ら男子に5月に入ったあたりから「ねぇ、佐伯君、私の誕生日にシルバーリグくれない?」と言っていました。
僕と友達は「わかったわかった、考えておくよ」と軽くあしらっていました。
「彼氏にもらえば?」と言うと「だって彼氏いないし…」と少し落ち込んだ表情をしていました。
僕は頭の片隅に「一応5月30日のことは考えておこう」と思っていました。
5月の連休明けにサークルで「弥彦山(やひこ山)」登山をすることになりました。登山といっても2時間ほど山登りをする程度の小さな山なのですが、
この弥彦山登山のときに、例の彼女が僕ら男子3人に「弁当」を作ってきてくれました。
僕ら男子3人で「こりゃシルバーリング渡すしかないかねぇ」と言っていました。
そして僕ら男子3人は、それからしばらくしたある日、新潟の古町(ふるまち)という繁華街へ行き、3人でお金を出し合ってシルバーリングを買いました。
これで彼女が喜んでくれたらいいなぁと僕は思っていました。
そして彼女の誕生日、5月30日がやってきました。 その日はちょうどcクラスの食事会の日でした。
いつも通りクラスのメンバーで楽しく語り、2次会にカラオケに行きました。
15人くらいでカラオケに行ったのですが、5月30日の夜23時くらいになり僕は友達に「いつシルバーリング渡す??」と話し合いをしていました。
早くしないと5月30日が終わってしまいます。ところが彼女はカラオケに夢中になっていて、それどころではありません。
クラスのみんなもいるし、恥ずかしかった僕たちは、結局シルバーリングを彼女に渡すことができませんでした。残念というか情けないというか…
そして日付が変わって5月31日になり、カラオケが終わり、解散することになりました。
ここで僕は友達に腕時計を借りて、腕時計の時刻を23時くらいに針を戻しました。
そして「〇〇、俺が送っていくよ」と言って、その彼女を彼女のアパートまで歩いて送っていきました。
20分くらい2人で話しながら歩いて、彼女の住んでいたアパートに着きました。
そして僕は、意を決して「実は…俺たち3人からプレゼントあるがやけど… この腕時計見て!まだ23時20分すぎだよね?l
今はまだ5月30日だよね。誕生日おめでとう!これ、シルバーリング。受け取って」と言ってシルバーリングを渡しました。
彼女はうれしそうに「ありがとう!」と言ってくれました。
…僕はほっとしました。 5月30日は過ぎてしまいましたが、とりあえず約束のシルバーリングを渡せました。
後日、先輩から「佐伯、彼女シルバーリングもらえてすごく喜んでたよ。よかったな!」と言ってもらいました。
…7月くらいにその彼女にもちゃんとした彼氏ができました。
卒業後、彼女は教員採用試験に合格し、佐渡島へ赴任しました。
それ以来、彼女とは連絡をとっていませんが、毎年5月30日になると、彼女との「シルバーリング事件」のことを思い出します。
きっと彼女も元気に暮らしていることと思います。
2024年06月01日 21:45